屏風山脈のヤブ山【越山】


根尾西谷川の堰堤より越山を望む

 屏風山脈!、ふふん?

 誰が付けたか屏風山脈、国土地理院の20万分の1地勢図は奥美濃の山々がすっぽり入っています。
 奥美濃ファンにとってはバイブルのような一枚の地図。

 岐阜県境の山を見れば南の伊吹山から北の小白山まで連なっています。


 
伊吹山   射能山   金糞岳   土蔵岳    三国岳
 三周ヶ岳  美濃俣丸  笹ヶ峰   金草岳    冠山
 若丸山   能郷白山  越山    蝿帽子山   屏風山
 左門岳   平家岳   滝波山   毘沙門岳   小白山



 ほとんどの山がヤブ山で安易に登れる山ではありません。
 この20座に登り続けて20余年、その最後の一座になる越山が今回の山行です。
 さて今回で完登出来るでしょうか。

火遊び


【年月】1999年11月10日(前夜発)
【地域】奥美濃
【山名】越山(おやま)1,129.3m
【人 】佐野、こまくさ、赤名、山太
【天候】晴れ

これは沢登り?


 二年前に蝿帽子山に登ったときと同じだ同じだ。同じ場所にテントを張った。同じ場所にベンチもあった。そして今年はこまさんが参加して、平日おじさん登山隊豪華メンバーである。

 暖かい焚き火の横で鍋を囲んで宴会が始まる。
 暑くもなく寒くもなく、風もなく煙くもなく、月もなく雲もなく、気持ちの良いひと時だ。時折流れる流れ星を見ながら星座を観察。なんてロマンチックなおじさん達であろうか。

 そして宴会たけなわ、あの火遊びをすることにした。闇夜の空間に書き上げた「はえぼうし」の文字を覚えているでしょうか。あの出来ばえに写真を見た人たちは絶賛した。
 今年は越山である。三人で「おやま」と描く、さてうまく書けただろうか。
 こうして朝まで飲み明かしたい気分だがそういうわけにも行かず1時頃テントに潜り込む。

やったぜ越山


 今回の越山は蝿帽子の一つ上流にある山だ。能郷谷一つ手前の沢から河原に降りる林道があった。赤名さんの4駆が威力を発揮する。河原まで降りるとここはまた昨夜以上に良いテン場だ。

 さていよいよ越山にとりつく。まず根尾西谷の本流を渡らねばならない。蝿帽子の時はそこで足を滑らせて骨折と相成った。ものすごく慎重になっている自分がおかしくなる。そして第一関門無事突破である。
 対岸に渡ったが全く道は見あたらない。越山に突き上げているガレ沢までしばらく藪を漕ぐと踏み跡とテープが見つかった。
 テープはガレ沢の右岸に付いている。私達の計画ではこのガレ沢を渡った尾根を登る予定だった。
 しかしあまりにも念入りに付けられたテープに、この沢のルートを辿ってみたくなった。ひょっとしたら越山へのメインルートかもしれない。沢登りならこれほどテープを付けているはずもなく、これぞ越山の道だと確信を持つ。

 標高800mあたりでそろそろ左岸の谷を登った方が越山への最短コースに思えたが、テープは本流を上っていく。
 私達は登山靴だったので「このルートを下山ならちょっとやばいなあ〜、」なんて思う。

紅葉越しに能郷白山を望む


10メートルほどの滝が3段になっている。これ以上登山靴での直登は無理である。そのときテープは左岸の藪の中へ入っていた。
 いよいよ藪こぎである。ほとんど腕力だけで登るような急斜面だ。昔はこんな藪こぎは得意だったんだけどなあ〜。
 あの蝿帽子で肩を骨折してから腕の力が極端に落ちている。胸の筋肉がこむらがえりになってしまった。参ったぁ。


 藪に突入してからビニールテープの目印はなんと補助ザイルのように延々と延びている。これじゃあ迷いそうもない。

赤名さん推薦ショット


 左右に小高いピークが見える場所に上がってきた。どうやら国境稜線のようだ。全く踏み跡がなくこれが本当に稜線?。北の方には白く輝いた山が見える。どうやら白山のようだ。

 私達は稜線に立っているのだと確信する。予定よりかなり西に上がってきたようで、ここは1208m峰と越山の中間地点らしい。
 また藪こぎが続く。しかしまあここは岐阜と福井の県境というのに、全く道や印がないのにはびっくりさせられる。


 11時、なにも見えない越山に着いた。やったぜ!。デジタルの携帯は圏外だったが、佐野さんのアナログ携帯は木に登れば助役との連絡が取れた。
 一時間近く頂上で休憩したが下山ルートのこともちょっと心配だ。

 頂上から稜線を少し西に戻ったところで辿ってきたのとは違う印を見つける。かすかな踏み跡らしきものもある。
 どうやらこれが尾根伝いの道らしい。頂上付近の紅葉はもう終わったようだが、中腹の紅葉はすばらしい。自然林の秋の色ってなんてすばらしいもんだろう。紅葉を楽しむ心のゆとりが出来てきた。
 のんびり登頂の余韻を楽しみながら下るのも良い。心ののんびりとは裏腹に斜面はなんと急なことか、とにかく尾根に忠実に踏み跡が付いているもんだから転がるように降りる。頂上から一時間ほどで堰堤に出た。
 「ちゃんと降りられるだろうか・・・。」なんて助役に連絡を入れているのに、ちょっとばつが悪いなあ〜。まあおじさん達のしゃれだわ。


 この道にから登ろうとしても取り付きが全然見あたらない。このレポートを読んだ人のために、赤い布を付けておいたがわかるだろうか。

 帰路は温見峠を越えてドライブをする。すばらしい景色に何度も車を止めてシャッターを切る。


 #(~0~)/U カンパーイ  〇~~/\/\~~/\~~ 《村チョッ! Santa!》


●鍋のない鍋
 今夜は鍋を用意してます!。ありがたい。赤名家の芋煮風鍋は定評がある。
寒い夜にこれをつつくのが最高にうまい。赤名氏愛妻のスタンバイである。
 しまった!。お玉を忘れてきたぁ。まあ良いかシェラカップですくえばいい。そんな話を車でしていたが、そんな次元ではない忘れ物語。
 あれぇ、鍋がない!。材料はあるが鍋を忘れて来たようだ。今回は山太の一人用鍋で事なきを得たが、山菜天ぷらのメニューに食用油を忘れたのと、どちらが失敗高得点か話題になる。
 何年経っても“山太の油忘れ”は失敗のお手本のようになっている。

●なくなったこまさんの杖
 ストックのグリップにカメラ雲台を取り付けたこまさんのストックを見た方は多いだろう。
いつも使うわけではなく、むしろ彼のザックにくっついていることが多かった。そのストックは何度も壊れたが次の山行には復活する。不死鳥のように・・・、と言えば聞こえは良いが、それはまるでゾンビのように継ぎ接ぎになって蘇るのだ。
 しかし今度は先の部分が藪こぎで紛失してしまった。しばらく急斜面を戻って探したが見あたらない。もう蘇ることはないだろう。惜しいアイテムを失ったもんだ。
●くるった人間GPS!
“人間GPS”と異名を持つ佐野さんの読図術は卓越している。その佐野さんが稜線に上がったとき、「ここはどこ?、私は誰?」状態になってしまった。
それほど惑わせてしまったのはあのテープの連続攻撃だった。そして藪の中に張り巡らされたテープは読図力を麻痺させてしまったのだ。
 最終的には、今回の越山は沢ルートから登って尾根ルートで降りる計画だったと、4人で口面を合わすことにする。これは4人だけの秘密である。
●越山に登られる方へ
 越山に登る最良コースはやはり真南の尾根ルートだろう。
 越山に突き上げているガレ沢の出合いには広いススキの平地がある。先端の本流には堰堤があり、それを使えば本流を渡ることが出来る。
 道路から堰堤に降りる道は見つけられなかったが、私達は右岸の河原を歩いて車まで戻った。
 ガレ沢右岸の道を平地の終わりまで辿ると、かすかに沢に降りる道が見つかる。堰堤の下を左岸に渡り、一つ下流の堰堤から強引に藪を登ると尾根は歩きやすくなる。忠実に尾根を辿れば越山へ導かれる。健闘を祈る。
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