【山 名】 扇ノ山(1,310m)
【山 域】 但馬
【日 時】 1983/02/10
【天 気】 曇り後雪
【メンバー】 山森、中村、山太
鳥取兵庫県境の、扇ノ山スキー山行のお話です。
山陰線、浜坂の駅で夜明けを待っている時も、雪は降り続いていました。
「山は荒れているだろうなあー。」
この風雪の中、山中にはいる危険を感じて、心はこの空のように暗く、リーダーの責任も、いつも以上に重く感じていました。
朝、里では天気は回復したようですが、山に入ると依然激しく降っています。タクシーで石橋の村に入りました。
なるべくスキーを担がなくてもいいようにと、一番長い尾根のルートを取ったのですが、新雪が深くペースが上がりません。
幸い昼過ぎから雪はやみ、遠望も利くようになりました。今夜泊まる予定の避難小屋(1,089)は、広い広い上山高原の雪原の向こう側、遥かかなたに見える山の上、何と遠い事。
今回は、スキー山行ベテランの、足の揃った三人のパーティーです。少々遅れ気味のムラさん、テントを張ろうと促すが、もうすぐ小屋だ、ガンバレ、ガンバレ。
それにしても最後の登りはキツかったなアー。やっと全員避難小屋に着いたときは、もう日が暮れようとしています。
小屋の入り口は二階の窓からです。積雪3メーター位でしょうか。
それからしばらく動く度に「ああしんど〜。」の連発です。
翌朝、小屋のドアを開けて外を見た。「こりゃちょっとヤバイなあ〜。」昨日あんなに小屋の周辺を歩き回ったのに、それも腰まで潜った足跡が、まるで消しゴムで消した様に消えている。
そして僕たちが、ここに居る事すら消そうとするかのように、雪は降り続いている。
(登れるだろうか、もし途中まで行って、登れなかったら、引き返す事になるだろうけど、この雪じゃ1時間もすれば、全くトレースが消えるでしょう。この広い尾根で帰路を失うと・・・・。)
そんなよからぬ事を、彼らも考えているのでしょうか、黙々とスキーを滑らす。スキーを脱げば腰まで潜る新雪のラッセルです。
大ヅッコ(1,273)でザックをテポして、ピークをピストンするつもりでしたが、なんだかこのザックを背中から放すのが恐くなりました。
テポ地点が解らなくなればそれこそ遭難です。ザックは背にしてコンパスだけを頼りに高みへ高みへと、2時間位歩いたでしょうか。案外と言おうか、突然と言おうか、真っ白い空間にピークが見えてきました。
頂上の避難小屋にはいり、風と雪から解放された安堵感!、心が和みます。ピークから南に下り、林道に出る事にした。これからが一番神経の使うところです。遠望が利けば気持ちの良い滑降でしょうが、10数メートル程しか視界が利かず、深雪で膝まで潜り、スキーを滑らすと、周囲の雪が一緒に滑り落ちて、小さな雪崩を起こします。
周囲の景色も真っ白で、一瞬、止まっているような錯覚を起こします。地図とコンパスと足元の傾斜だけを頼りに、やっと林道に出たときは、「やった!帰れる。」そんな気持ちでした。
その夜は、その林道でテントを張って(950)、やっと落ちつきました。 翌日は、どうにか雪もやみ薄日も差してきました。しかし山を見れば相変わらず吹雪いているようです。本来なら林道だと、立って居さえすればスキーの板が、身体とザックを麓まで運んでくれるのですが、(ちょっとオーバーかな。)でも新雪でスキーは滑らず、一貫して何と欲求不満の残るスキー山行です。
若桜線丹比駅まで、ポクポクと歩きました。 しかしこの時期、スキーがなかったら絶対に登れなかったでしょう。
帰ってから分かった事ですが、この時、一級寒波がきていたようです。
〇~~/\/\~~/\~~ 《 山太 (Santa!) 》
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