【日 程】1984年05月31日
【地 域】奥美濃
【山 名】雷倉(1,168.6m)
【天 候】晴のち雨
【メンバー】山太
今度の日曜日に皆が雷倉に登るんやてー!、クソー。あれは登りたい山の一つや、皆が登ってしまうと、いつ登れるかわかれへん。
ほんなら値打ちのあるうちに一人で登ったれ!。
とまあそういう訳で、皆が予定している4日前の水曜日、京都を朝出て、昼に尾蔵谷に入りました。
今日は偵察だけで、明日、朝早くから登る予定です。林道終点から、沢の様子を見に入ったんですが、どうも地形はハッキリしない。だんだん心細くなって、「やっぱり一人じゃ沢登りは恐いや!、」と、あっさりあきらめ、デッカイフキをザックいっぱい採り、車に戻ってきました。
八谷の村の方から、登れる道があると聞いていたので、一度そっちへ行ってみるか。道がなければ、又ここに戻って沢を詰よう。
こんな時、何と車は便利な事か。峠を一つ越えて八谷の村には入りました。村のおじさんに聞くと仕事道があるとの事。よしこのルートに決定。今夜はこの周辺の河原で、焚火を肴に一杯やろう。
(この焚火の横で寝そべって、酒を飲むのが大好きな山太であります。)
河原に廃屋の廃材があり、それを薪にするため集めていると、目にゴミが・・・。「ああえらいこっちゃー!。」
川に顔をつけて、目をパチパチして、洗ってもダメ。水を口に含んで、ストローを曲げて目に噴射してもダメ。こりゃあ雷倉どころやあらへんぞ。とにかく眼科へ行かにゃあ。
村まで車を走らせ、地元の人に聞くと、眼科は岐阜市まで行かんと無いって。
「4キロほど先に、村の診療所があるから、行ってみたら。」
てな訳で、涙をポロポロ流しながら、片目で車を運転して行った。あいにく先生が居ず、看護婦さんが
「洗う位しか出来ないけど、まあやったげましょうと・・・。」
そして取れたんですゴミが、ああ神様、仏様、看護婦様。
「すみませんでした。保険証、持っていないんですけど、いくらお支払いしたらよろしんでしょうか。」
「先生も事務も帰って居ないので、もういいですよ。」
って。帰りの車の中で、感謝感激、思わず涙ぐみました。
翌朝、まだ暗い5時からモソモソ歩きだしました。取り付きに少し迷ったが、尾根に乗っかればしめたもの、木材切り出しのワイヤーをくぐったり、跨いだり。
954mのコブまでいい道があった。下津谷で伐採した木材をここまで上げ、ここから一つ尾根を越えて、八谷まで降ろしているようだ。それから道は殆ど消えかけている、幸い伐採が新しいので、腰くらいの低いヤブなので助かった。うかつにも、印も付けず、確認もしないまま、頂上の広い所に突っ込んでしまった、この辺は背丈をはるかに越す、笹と潅木のヤブだ。
また、えらいこっちゃあ、降り口が解るやろか、おまけにガスも出て来たし。頂上に9時に着く。
笹に囲まれて、ほんの数メートルの刈り込みがあるだけ、展望皆無。用意しておいたメッセージをビンに詰める。
どうも降り口が心配で、ゆっくりした気分になれず、すぐ下りだす。やっぱり解らへん。
しばらく下っては木に登り、あたりを見るがガスで何も見えへん。地図とコンパスをにらめっこ、又登りなおして、コンパスを見ながらヤブをこぐ。かすかに下の方から、チエンソーの音が聞こえて少しは安堵する。30分程迷った末、やっと偶然にも降り口の、見覚えのある尾根に出た。
うん、あれは絶対偶然や、運が良かったんや、山ってこわいな。一人だと特にこわい。仕事道に出て、やっと落ちついた。
気分晴れ晴れ、それとは反対に雨がザアザア降りだした。そやけど、やっぱり気分は晴れ晴れ。やったぞ雷倉。
3日後に、皆が登ってあのメッセージを見た時の様子!。思い浮かべるだけで・・・・。
「ワッハッハー、アーア面白。」
※ここで頂上に残したメッセージを紹介しておきます。
ブナの木クラブ御一行様
雷倉登頂おめでとうございます。
頂上での感激は、ひとしおだとお察しいたします。
本来この頂上はブナの木クラブ初登頂であるはずでした。が、
残念ながら、3日前この頂上はすでに征服されてしまいました。
気を落とさず、お気を付けて下山して下さい。
誰のメッセージか、解っているでしょ!。
※尾蔵谷は揖斐川支流。
※根尾西谷川の支流に、中又谷と下津谷が雷倉に上がってる。その間の尾根を登った。
〇~~/\/\~~/\~~ 《 山太 (Santa!) 》
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