台高山脈池木屋から焼山尾根



台高山脈、池木屋山の下りに焼山尾根を使いえらい目に合いました。

 【日  程】79年11月23日(金)〜25日(日)
 【地  域】台高山脈
 【山  名】池木屋山
 【ルート 】大又→明神岳→池木屋山→焼山尾根→久豆
 【メンバー】森、山太

 国見山から縦走して最終日に下山道に使ったのが、その焼山尾根でした。

焼山尾根を下山し、大台ヶ原の大杉集落から来るバスをつかまえる計画だった。昭和50年度国体コースとなっていたので、いい道があるはずだと甘い期待を持った訳なのです。

 この山域には鹿が生息しているのであろうか、”鹿の休み場”と書かれた道標を過ぎ、1,229mのピークで一服する。ここまでの道はよく踏まれていた。
 更に進とブッシュをかき分け木を跨ぐ様になってくる。地図を見ると1,100m付近より左に折れ、焼山谷へと下るようになっていたが、十分に注意して歩いたにもかかわらず、この道は発見できなかった。
「真っ直ぐにこの尾根を下りよう。」決断は早かった。
ひょっとしたらヤブ漕ぎになるかも知れない!。
最初からそんな予感がしていたのですから・・・。

 通過に手間取りそうな痩せ尾根を少し右から巻くとガレ場に出た。
ここは難なくトラバースしたのだが、その後の前奏曲ともいうべき、第一の関門であったみたいだ。
 尾根は次第に急傾斜となってきて、ブッシュや木の枝をつかんで滑り下りる。木を伝わなければ足場がないようになってくると、いよいよ急な岩場に出た。ホールドとスタンスを確認しながら慎重に。最後の100mは尾根よりも右の支谷へ出て沢を下降した方がましであった。
 細流が流れる滝ともいえないような、5メートル程の小滝を下りるのに、また一苦労。「右のホールドがない、左のスタンスも」・・こんな調子でありました。1時半、大和谷に降り立つ。
 この時はまだ二人とも3時のバスを諦めてはいなかった。

 左岸には道がついていたが、その道を300mも行くと、崖淵の橋は落ちていた。引き返して川床におり、へつりながら下流の道へ出る。
 焼山谷の出合には落差30m位の滝がかかっていた。ここは滝壷の前を通れたのでほっとする。だが此の後池谷の出合を過ぎて200mも行くと、道はなくなっていたのです。両岸は絶壁!、高巻きしてヤブを漕いだ位では、前進できるような所は見あたらなかった。
 少し引き返すと左へ登る道があったが、偵察した限りでは上へ上へと登るばかりで、到底高巻き道とは思えない。
これは二人が発見できなかった国体コースの道であろうという結論になる。
地図を広げて思案する。
 対岸に道があるようになっていたので、対岸に渡ろうと言う事になった。
それで地池谷のすぐ上流まで引き返し、飛び石伝いに大和谷本流、続いて地池谷右岸へと渡る。そこを少し登れば道があるはずであった。

 だがもう少し、もう少しと、100m位登ったが道はなく、ついに右岸の道も諦める事になった。
 此の時点でいよいよ本流を下降する腹積もりになった。
川に下りて左岸、右岸・・・と徒渉を始める。「ワッ冷たい!」なんて云っている余裕はなかった。
 だがそれもしばらく行くと前進をはばまれた。深い流れで両岸は絶壁、へつりが出来る所でもなかった。
 ベルトまで水に浸かり、足をブラブラさせて足場を探してみる。11月の沢は冷たい。それに、たとえ胸まで川の中に浸かったとしても、川底に足が届くという保障はないような場所であった。

 残る道は一つ、山頂から下りてくる「国体コースの道であろう!」と結論を出したあの道を、とにかく登ってみようと言う事になった。
 結果的にこれが正しかったようだ。徒渉でずっしり重くなった登山靴での登りはしんどかった。

 一歩一歩足を持ち上げ150mも登ったかな。六丁峠と言う道標があって、道はまさしくここから下っていた。
 本当にすくわれるような気持ちであった。ザックを投げ出してちょっとだけ休む。
 だがそれもぬか喜びか、本流に下ると今度は、左岸の崖に取り付けてあった 40m程の木橋が落ちている。残っているのは下流側半分だけだ。
これを見た瞬間は実際、日没のためビバーグを覚悟したくらいだった。

 これだけズタズタに寸断されてしまっては、焼山尾根の道が荒れる一方なのも当然であろう。
木の枝をつかんでとにかく中程まで行く。
かろうじて針金に支えられてぶら下がっている、木バシゴに手をかける。
一人づつなら耐えられそうな感じであった。おもいっきりよくこれを登り、這うようにして通過しました。

ここが最後の関門であったみたい。五万図にも載っている三滝が、木原造林所跡から見えた。
 轟音と共に水しぶきを上げる滝は落差100mはあるだろう。
大台の山の深さをしみじみと感じさせる様な堂々たるものでした。

 真っ暗になった林道を歩いて久豆に着いた時、山頂から実に10時間以上経過していたのでありました。

            〇~~/\/\~~/\~~ 《山太 Santa!》


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