奥美濃屏風山沢登り


 【日  時】1981年08月13日
 【山  名】屏風山(1,284.6m)
 【山  域】奥美濃
 【天  候】晴れ
 【メンバー】室木・山森・高田・山太

 2年前の5月に、久沢より左門に登った時、屏風谷に雪渓を構えた屏風山を始めて見たのです。その時から登りたい山の一つでした。しかし交通の便が悪く、車を使わなければ3日では登れません、それがやっと念願かない、計画実行です。

 8月12日
 夜9時に京都を出て高速に入ったのですが、お盆のためたいへん車が混んでいます。北陸自動車道を避け、大垣より白鳥回りで伊勢峠を越えて笹生川に入る事になりました。
 箱ヶ瀬橋の入り口にこんな立て看板があったのです。「伊勢峠〜中島間、道路工事のため8月11日より当分の間通行止め。」一応伊勢峠までは入れるという事ですが、その先中島までの間どこが工事中なのか、中島よりならば伊勢峠回りは正解なのだが・・・。

 九頭竜湖の水がなくなり、峠に近づくにつれ谷が開け、水田の跡が広がっています。昔はこんなに奥地まで、雪と戦いながら耕地を広げてきたのですね、その人々の苦労がうかがえます。
 峠を越えてほんの数10メートル下った所で、工事中のため通行止めです。正確には路肩工事なので、十分車が通れるのですが、工事中のショベルカーが、デンと道の真ん中に止めてあるので通れないのです。残念、明日はここから歩かなければなりません。
 峠の空き地に車を止め、早々にテントを張り仮眠をしました。3時30分です。

 8月13日 晴
 8時に車を残して峠を下りました。30分ほどで中の水谷です、すぐに左岸の道も見つかりました。道は結構はっきりしています。堰堤の所で、一旦河原に降りると、今まで数匹付きまとっていたアブが、数10匹にもなって襲いかかってきたのです。
 予期していた事ながら、まったく身震いのする思いです。谷は見通しが良いから周辺のアブが一斉に集まってきたのでしょう。

 道はだんだん生え混んで来て、谷の方が歩きやすそうです。水量の多い時は、深い谷なのでへつりが大変でしょうが、水が少なく、谷でもなんなく歩く事が出来ます。11時に西ノ水の出合に着きました。

 釣り師の入った跡が、あっちこっちに見受けられます。
 東ノ水沢に入り、中ノ水沢出合とナベクラ沢出合の中間ほどで、ベースを張る事にしました。まだ12時を少し回ったところです。メンバーの二人は、竿を提げ夕食の仕入に出かけました。残る二人は、大漁を願いつつせっせと薪を集めます。
 彼らは4人のおかずを、十分仕入れて帰ってきました。今日はイワナのムニエルです。そして焚火を囲んでバーベキュー。酒もたっぷりあります。ただ日が暮れても襲ってくるアブには手をやきます。

 8月14日 曇
 リーダーの4時起床はまだ夢の中、やっと5時過ぎ、二日酔いの重い頭を抱えて起きあがりました。夕、ちょっと騒ぎすぎたかな。7時にサブザックにザイルを入れ、屏風山にアタックです。
 トチボラ沢の出合までは、沢登りではなく小川歩きです。高度も余り稼げません。トチボラ沢にはいると伏水となり、その上は所々淵に水があるだけです。何とその淵々にでっかい岩魚が居たのです。岩陰に隠れた岩魚を追って、手を突っ込むと手ごたえがありました。何と25センチは十分あろうという岩魚が手掴みです。そして15センチくらいの、上顎がやたらにくびれて、受け口の岩魚もつかまえましたが、それは逃がしてやりました。

 10メートル位の直登できる滝が1ヶ所ありそれが魚止めでしょう。水もなくなりややっと高度がぐんぐん上がってきました。谷が終わり、目星を付けて10分ほどヤブを漕ぐと、どんぴしゃり、三角点のど真ん中に上がってきました。11時45分です。
 ヤブ漕ぎの短いのはいいのですが、余り変化がなく印象薄い谷でした。今日は曇っていてせっかくの展望は余りありません。

 下りはデサアラクラ沢を下る事にしました。中ノ水谷ではいちばんきつそうな谷です。100メートルの滝があるという事ですが、どうなるでしょうか。ピークより北西にヤブを漕ぎ、沢に入るとすぐ岩盤の急な所です。
 滑滝状になっていて高度を下げているのですが、ホールドがしっかりしているのでそんなに厄介な所はありません。10メートル位の滝は3ヶ所あってザイルで下りました。しかし楽しみにしていた100メートルの滝はいっこうに現れません。とうとう3時に中ノ水沢に出てしまいました。

 魚影が見えたので、食料調達係が竿を出しました。1時間ほどがんばっていたでしょうか。しかしここは人がよくはいるのでしょう、ベテラン釣り師も釣る事が出来ません。
 中ノ水沢も東ノ水沢とおなじような平坦な沢です。5時にベースに帰り着きました。大事に持ち帰った手掴みの岩魚を味噌汁にして、何度も何度もため息を吐きその日も暮れました。

 8月15日 晴
 昨夜雷がなったので、慌ててテントに潜り込んだのですが、ぽつりぽつり位の雨で済み、今日はいい天気になりました。
 帰る途中、西ノ水沢出合の少し上流で数人分のザックが置いてありました。昨夜ここに泊まり中ノ水沢に入ったのでしょう。そして下流でも釣り師に合ったし、坂見谷出合近くでは6〜7人の人達がアイスボックスや、水中メガネを持って、谷へと入って行きました。
 比良で岩魚がいっぱい釣れた、と言う昔話を聞いたように、この奥美濃で岩魚が釣れたという話も、近いうちに昔話になるかも知れませんね。
 あのトチボラ沢の受け口岩魚よ、がんばって生きるんだよ。12時に車に帰り着くと、あのとうせんぼをしていたショベルカーがなくなり車が通れます。
 真名川まで車を走らすと、涼を求めて川遊びをしている家族連れがあっちこっちで見受けられました。

            〇~~/\/\~~/\~~ 《山太 Santa!》


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